2010-02-15

410 市場の横で大金持ち 16-02-2010(火)

 スペインの都市には公設市場が1つ、ないし複数ある。卸売りではなく、街中にある食品の小売市場のことである。大体月~土曜日の午前中のみの営業で、魚が入って来ない月曜日は閑散として、金土曜は賑わうと相場は決まっている。何でもありのス-パ-と違って昔ながらの趣はあるが、やはり、時代の流れに押され気味か。
 日本語情報センタ-から徒歩数分のサン・アグスティン市場もその一つ。今週はそのすぐ横のビルのお話。走って3秒。
 その2階のアパ-トに住む知り合いのスペイン人男性によれば、家主はこのビルの1階の貸し店舗数件と2階には広い貸しアパ-ト4つ。そして、自ら住む最上階を所有しているそうである。何もしなくても家賃収入だけで毎月300万円ほど入って来そうだが、半分は空家状態で、本人も商売気がないとか。本人が80過ぎの爺さんと聞いてそれも納得したが、もっと話を聞いて今週のコルムナの出汁にする気になった筆者であった。
 5人兄弟の末っ子のこの爺さんは生まれつき金持ちの家系らしい。そして、長兄は何とヒトラ-の子分のあのフランコ将軍のボディ-ガ-ドだったとか。その兄弟達も財産を処分して高齢で皆亡くなり、現在残ったのはこの独身の爺さん一人。何故独身か? 読者は想像が付くだろうか?
 仮に離婚すれば半分持って行かれるから(コルムナ287後半)!? 単純な理由だが、今日スペインでは金持ちほどこの理由で同棲はしても結婚することを嫌う。筆者もこの手の話を聞くのは初めてではないので驚きはしなかった。いや、驚いたのはこの金持ち物持ち爺さんがこの歳になって子供も身寄りもなく、一体この先どうするか考えてもいないと言うことだった。聞けば財産を譲る気などない折り合いの悪い姪(めい:ヒルではない)が2人と125km離れたマラガ市(ピカソ出身地)に飽き足らず貸家の一軒屋を2軒持っているが、これも貸す気もなく蛻けの空家。
 そこで、この筆者の知り合いはたまに冗談交じりに養子にしてくれと言っているらしい。この男も昨年嫁はんに子供を連れて逃げられたので、もしかすると同類相憐れんでもらえるかも知れないほど世の中甘くはないと筆者は言っておいてあげたが、確かに誰も相続人がいなければ国が没収、しかし、売り捌いたとしてもその金は一体誰のものじゃ!? どうせ老い先短いのに!?

 受けるより与える方が幸いである。-----或る昔の偉い人

 貧乏たらしい孤独死の老人が実は莫大な預金と有価証券を持っていたとか、読者もこんな話は聞いたことがあるでしょう。 
 いえ、仮に今週のこの老人が特別強欲爺いではなかったにせよ、これが多かれ少なかれ金と物に価値観を置く人生の集大成だとすれば、最後は興醒めと答えは出ているのです。
 誰でも経験のあることですが、推理小説を読みつつ、つい誘惑に負けて最後のペ-ジをめくって犯人が判ってしまった、あ~あ、もう読む気がせん、や~めた。これを興醒めと言います。 
 だったら、受ける価値観の人生に興醒めするなら、実はそれは早ければ早い方が豊かな人生のためなのです。足腰立たなくなってからでは遅いのです。
 我々は資本主義社会に生きている以上何らかの仕事をして報酬の金銭を受けなければ生活出来ないのもまた真理ですが、その金銭が欲しい、受けたい、もらいたい性根の実か、与えたい性根から生え出でる実か。見た目の実は例え同じ金銭であっても、性根が違えば実の質は違って当たり前。木の実は根ほどのものだからです。
 そして、実ならそれは最後は市場に並んで買ってもらって人々に食べられるのがその使命。美味い実なら売れ筋だし、まずい実なら振り向きもされないでしょう。ましてや、豊かに結んだ実を惜しんで枝に放ったらかしで腐り果てる・・・。利口じゃないですな・・・。

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