2008-12-22

324 鳴り過ぎれば熱さ忘れる良いギタ- 23-12-2008(火)

 労せずして音が出る、いや、勝手に音が出てくれるギタ-こそ良いギタ-の第一条件だと言うことをマヌエル・ラミレスのギタ-を例に(コルムナ316~319)、また、軽くアクセルに足を乗せるだけで勝手に加速する良い車と常にアクセルを踏み込んでいなければ止まるボロ車、そして、パリッとした煎餅と湿気った煎餅に例えてコルムナして来ました(同321~323)。
 確かに車と煎餅ならこの見方でいいかも知れませんが、ギタ-に関しては100%そうは言い切れない面もあると言うのが今週と来週のお話。
 まず今週は鳴り過ぎるギタ-、来週は買ったばかりの頃は鳴らないギタ-について。
 あたかも暴れ馬の如く、鳴り過ぎるが故に却って敬遠されるギタ-など存在するのでしょうか? 鳴らなくてどう仕様もないギタ-より鳴り過ぎる方がましなことは想像出来ますが、論より証拠、筆者の友人でもあるグラナダ在住フラメンコギタリスト、カルロス・サラテ氏は来日公演二度。その強いタッチから弾き出される音は正に日本人離れの大音響で、しかも、本人は全く疲れを知らない!? そして、押し相撲一辺倒のパワ-ファイトだけではなく、凄まじい速さと音量のピカ-ド(スケ-ル)にアルペジオにトレモロ~と技巧も十分。おまけに、楽譜も読めないくせに大聖堂(A.バリオス)の第三楽章を耳コピで涼しい顔で淀みなく弾きこなすのだから手が付けられません。
 こうなると才能ある人間には敵いませんが、そのカルロスの言うには鳴り過ぎるギタ-はうるさくて耳障りなので、少々鳴らないギタ-の方が却って好みなのだそうです!?
 ま、こう言う良いギタ-&良くないギタ-の判断基準も存在すると言うことだけでも読者は覚えておけば将来のギタ-選択の引き出しの数も多くなります。ただ、一般的にタッチの弱い日本人奏者にはむしろこうした言わば過敏なギタ-は大歓迎かも知れません。 
 ここで勘違いしてはいけないのは、パワ-で押し捲るからと言って、決してカルロスは力任せではなく、逆に、驚くほど力は入っていないからこそ指が疲れず速く動き、音もバカでかいのです。これは逆説の真理であり、コルムナ315以前に散々述べて来たことでもあります。

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