2007-10-23

289 バブって弾けりゃ摩天楼 23-10-2007(火)

 日本語情報センタ-のすぐ横に二年位前から不動産屋がある。何故か以前フラメンコ会場のガイドをしていた知り合いが半年位前から勤めている。空前の不動産ブ-ムに踊らされて、ガイドの日銭よりハイリスクハイリタ-ン人生を選んだらしい。
 何せ徒歩5秒なのだから、近くの共通のBar(バル:立ち飲み喫茶みたいなもの)も含めて朝夕顔を合わせることも多く、いつも色々な話を聞かされる。例えば、100㎡あるかないかのその不動産屋の家賃が7000ユ-ロ(約115万円)。正確な広さは分からないが、その正面の高くて誰も借り手の付かない貸店舗の家賃が倍の14000ユ-ロ(約230万円)。これに従業員の給料や保険など合わせれば一体一月どれだけの売上の商売なら成り立つのか、しかし、売手市場の不動産ブ-ムだから家主も強気だよな~、などなど。
 その建築ラッシュもそろそろ頭打ちで不動産ブ-ムにも陰りが・・・、と言う新聞の社説が今年は結構頻繁で、スペインのマスコミでも禁断の不動産バブルなることばが使われ始めている。首相や大蔵大臣が世論をなだめるための“心配ない”発言をたまに行うと言うことはもうきな臭い証拠ではないだろうか。ただ、バブルが弾けて人々が金を使わない不況になった日本とは違い、元々宵越しの金はもたねえタイプのスペイン人は金がない不況となり、もし弾ければこちらの方が深刻だろう。しかし、もう一つの違いは日本は日本だけのバブル崩壊だったが、スペインはいざと言う時はEUが何かしてくれるかも知れないと言う甘い後ろ盾がない訳ではない・・・かも知れない。もっとも、EUは所詮大同団結呉越同舟会だとすれば、大した援助はしてくれないだろう、と言う社説も今のところない。
 ところで、この知り合いの話で一番面白いと思ったのは、圧倒的大多数の客は自らが住むために物件を購入するのではなく、投資のためだと言うのである。『それじゃあ、お前んとこは不動産屋か投資ファンドか訳が分からんな』と言うと、あっさり『投資ファンドだろう』と割り切ったお返事。だったら、真珠でも金の延べ板でも何でもいい。しかし、強欲な人間ほど動く額がデカいハイリスクハイリタ-ンの不動産投資に傾くことに国境はないらしい、銀行から借りた金で!? 銀行も担保を十分取らずに!? どっかで聞いた話か!?

 金持ちにになりたがる人は誘惑と罠と、また、人を滅びと破滅に投げ入れる愚かで有害な多くの欲とに陥る。-----或る昔の偉い人

 一昨日の新聞に拠れば国民一人の借金(国の負債額ではなく金融機関からの借入金)が6年前8300ユ-ロ(約135万円)だったのに対し、現在は20500ユ-ロ(約340万円)。これは幼児から老人を含む国民総人口の平均額ですから、現労働人口の返済しなければならない実質負債額はもっと多いことになります。これは、不動産ならまだしも、今日国民は何でもロ-ンで買う傾向にあるが故だそうです。もっとも、これは他のヨ-ロッパ諸国でも同じ傾向だから心配するほどのことではない、とは書いていませんでしたが、これでバブルが弾けでもすれば更にヤバイことは明白です。
 幸か不幸かスペイン人はバブル崩壊と言われても何のことかピンと来ない様です。人間自らの身をもって体験しない内は何事も他人事なのでしょうが、ここにバブル崩壊を目撃した一人のスペイン人がいます。1929年の大恐慌の真っ只中ニュ-ヨ-クにいた、後にスペイン市民戦争でフランコ側に銃殺されるグラナダ市郊外出身の大詩人ガルシア・ロルカは、一晩で全財産を失ったアメリカ人投資家達が何人も摩天楼から投身自殺するのを自らの目で目撃したそうです。もう78年も前のことですが、金に絶対的価値観を置く人間の考えることは常に財テクであり錬金術であり、その習性も崩壊に至る電車道もまた時代を問わず同じである・・・と筆者は感じます。
 金以外のことに価値観を持った方が人生豊かになれます。ただそれだけのことです。確かに金は生活上必要不可欠なものですが、金は豊かな人生と言う目的を達成するための手段であって、それ自体決して目的にはなり得ないものなのです。手段を目的と取り違えると実は目的がないのですから、結局どこの目的地に行き着けないのも摂理です。
 それでもコカインやヘロインよりゃまだましか(コルムナ286)!?

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